職人

 
職人の技があってこそ。

バジャンが設計する伝統構法の建物を実際に形にするのは、職人さんたちです。職人さんとの、お互いに高め合うような信頼関係とチームワークで、良い建物ができあがります。

チームワークで よりよいものづくり

私は伝統構法の建物を設計していますが、その建物は、職人の技があってこそできるものです。つくる側のやりやすさでなく「いいものをつくってあげたい」という思いで最善の工夫を尽くし、手をかけることを喜びとする「現場への愛」にあふれた職人さん達とのチームワークがあることを幸せに思います。

図面上であれこれと吟味したことは、職人さんたちに「こうしたいんだけれど、どう?」と相談することがあります。そこで、よりよいアイデアが出ることもしばしばです。細かい寸法や仕上げ方、納め方にこだわりながら、何がベストなのか、いっしょに考えることで、よりよいものが出来上がります。

木を生かす大工

伝統構法の木組みの仕事の仕上りは、木の性質を知り抜いて、使いこなす大工の力量にかかっています。どんな木をどこに使ったらいいか、構造的なことだけでなく、見た目の美しさや楽しさ、取り合わせなども工夫するのは、木が好きだからこそでしょう。

大工は、適材適所に選んだ材に、現場で組み上げる木組を得るために、「仕口や継手」と呼ばれる接合部を、のみで削ったり、鋸で切り出したりする「刻み加工」を施します。加工するための印をつける「墨付」は、もっとも大事な工程です。

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左/墨付に欠かせない道具。墨壷と曲尺(サシガネ)

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左/刻みに用いるさまざまな形状の刃の鑿 右/切れる状態を保つために、常に研いでいる。

現場では、刻み上がった材を実際に組み上げることを「建て方」と言います。大勢の大工が集まって「板図」に記され、一本一本の材に墨で書かれた「番付」という記号に従って組み上げていきます。

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上棟した後は、屋根をかけ、土壁の工程へと進みます。土壁がついた後は、現場で造作工事を行います。細かなところまで住む人の使い勝手や好みに合わせて、丁寧に施工します。

杣耕舎

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山本耕平棟梁と、ジョナサン・アラン・ストレンマイヤーの二人の工務店です。社寺や数寄屋での修業を経てきた知識も豊富で、とにかく仕事が丁寧できれいです。そして、工夫することに喜びと情熱を感じる二人です。斧やチョウナで丸太から材を拵える古代製材技術「ハツリ」にもこだわっています。
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大工以外の職方さん

建物は、ほかにも多くの職種が関わってできあがりますが、伝統構法の建物において特に比重の高いのは、この二つの職種です。

左官

竹で編んだ小舞という下地に土を何重にも塗り重ねる土壁にしています。この土壁をつけるのが、左官です。部屋によって、中塗り仕上げ、漆喰塗りなど、さまざまな色や風合いをもつ壁の表現ができます。

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建具

建具は、その建物の仕上りの感じをかなり左右する大事な要素です。障子の割り付け方、見附の幅、引き手の寸法や材質など、細部にまでこだわって、その家に合ったものを建具屋に作ってもらいます。

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右/丈を短く切り詰めた組子と長い組子がリズミカルに並べた細かな格子は地元に伝わる「倉敷格子」