木組み・土壁・石場建ての伝統構法の設計にこだわるのは、それが気候風土に合っていて、長持ちし、構造と意匠とが合致した美しさがあるからです。
バジャンでは、伝統構法の建物を専門に設計しています。その理由をお話しましょう。
開口部を広くとれる良さ
伝統構法の家は、建物が軸組で成り立っているため、広々とした開口部とることができます。深い軒を張り出した南面に大きな開口部をとり、障子、ガラス戸、雨戸と建具を重層させ、夏は風通しよく、冬は低い陽射しを取り込む。こうした暮らし方が、温暖で多湿な中国地方の気候風土には合っていると思っています。
「構造=意匠」という明快さ、美しさ
今どきの家は、大壁工法といって、家の構造は壁に覆われてしまっていますが、伝統構法は、真壁づくりといって、家の構造である軸組を、おもてにあらわします。ですから、家を支える柱や梁の木組みそのものが、そのまま、意匠となります。
家を支える木組みをよく見せようと、大工も張り切って仕事をします。シンプルで力強い、明快な架構は、美しいものです。また、家の構造があらわれていることは、木材の吸放湿性による室内の湿度を調節することや、腐朽やシロアリのリスクが少ないことにもつながります。
伝統構法でも、現代や将来の生活に合った空間を
構法としては伝統構法を採用していても、いわゆる「コテコテの和風」ではなく、現代の生活にも、そして次の世代に受け継がれても愛されるような、自然でシンプルで飽きのこない設計を心がけます。
軸組構造のよさは、家族構成の変化にも対応しやすいことにあります。必要に応じて壁を作ったり、建具で間仕切りをしたりして、広い空間を分割したり、部屋であったところをひとつながりにしたり。そういった自由度が高いので、長く住み続けていくことができます。
「不易」を心がけ、ディテールにこだわります
長持ちする、時とともに熟成していく伝統構法で家をつくるのですから、奇をてらったデザインではなく、時間が経っても変わらないよさ=「不易」をめざして設計をします。
壁、柱、梁、建具といった伝統構法のスタンダードな構成要素を用いつつ、それぞれにどんな材を使い、どんな寸法にするのか、細かいところにはこだわります。建具の桟の割り付け、引き手をどうするか、厚みをどれくらいにするのか。使い勝手や寸法を1ミリ単位で、じっくりと考え、大工さんや職人さんとも何度も話し合い、アイデアを出し合いながら、決めていきます。
そういったディテールの積み重ねで「その家らしさ」が生まれてくるのです。
石場建てには、構造計算適合性判定
石場建ての伝統構法は、建築基準法の仕様規定では位置づけがなされていません。そのため、伝統構法の場合は「限界耐力計算」を用いて、大きな地震や強い風に見舞われた時の構造の安全性を確認し、審査機関による「構造計算適合判定」に合格して、建築が可能となります。
バジャンでは、限界耐力計算を、構造設計事務所に外注せず、自前でやっています。地道な作業ですが、建物の荷重を拾い出したり、力の流れを把握する作業なので、建物の構造的な特性が明確になります。「なぜここの柱がいるのか」「なぜこの太さでいいのか」といったことが確かめられるので、納得した設計ができます。
※設計料には、この構造計算の費用も含まれます。